「本」をテーマにした3冊

11月1日は『本の日』
ということで、今月は「本」をテーマにした3冊をご紹介させていただきます。

  • 「月魚」
    三浦しをん/著(角川文庫)
    672円(税込)

    古書店『無窮堂』を営む若当主の真志喜と、卸専門で古書を扱う瀬名垣。幼馴染の青年達による「古書」にまつわるストーリーです。
    情景は鮮明で尚且つしっとりと綴られており、友達以上恋人未満の危うい甘美な距離感を表しています。特に月光の下で跳ねる魚の描写は、切なさと眩しさを孕んでおり、二人の関係性と、「古書屋」としての立ち位置を絶妙に表していて秀逸です。
    幼い頃の「罪」に囚われたままのもどかしい関係にやきもきしつつ、「古書」の持つ生きた本のパワーを感じてみてください。
  • 「ふしぎな図書館」
    村上春樹/著 佐々木マキ/絵(講談社文庫)
    738円(税込)

    こんな図書館があったら怖い!でもあえて迷ってみたいような…文字通り不思議な図書館です。
    ふと「オスマントルコ帝国」の税金のあつめ方を知りたくなった「ぼく」は、通い慣れた図書館へ向かう。が、地下の閲覧室で待ち受ける老人と羊男に誘われるまま迷路を抜けた先には、思いもよらない世界が広がっていた…!
    これは夢なのか現実なのか、物語自体がまるで迷路のような不思議な浮遊感を覚えます。挿絵に騙されてはいけません。これは大人のためのファンタジーです。
    読後にはぜひカリッとしたドーナツを。
  • 「だいじな本のみつけ方」
    大崎梢/著(光文社文庫)
    628円(税込)

    中学二年生の野々香が、放課後に忘れ物の本をみつけるところから物語は始まります。「本が好き」という純粋な思いに突き動かされ、書店や児童館など様々な場所へ繰り出していく様子はとても勇気をもらえることでしょう。
    現役の中高生にはもちろん、忙しくてなかなか本を読めていないという方でも、学生の頃を思い出して懐かしさに浸るのも良いのではないでしょうか。

筆者と「本」との初めての出会いは小学生の時、青い鳥文庫『夢水清志郎シリーズ』でした。名探偵(?)の夢水清志郎は、普段はどこか頼りないのに、事件が起きるとあっという間に解決してしまう。その飄々とした姿に憧れ、その後コナン・ドイル『シャーロックホームズ』、江戸川乱歩『怪人二十面相』へと流れていったのは必然だったかもしれません。 とにかく推理小説が大好きな人間に育ちました。
主人公・亜衣ちゃんの愛読書、小栗虫太郎『完全犯罪』の良さが分かるようになったのはもう少し大人になってからです。これを中学生で読破しているとは、恐るべし。
その後私にとっての愛読書となったのは言うまでもありません。

2021.11.30

店長:渡辺秀行

東京都文京区小石川の千川通りから一歩住宅街に入ったところで、「敷居は低く、奥行は深く」をモットーに町の本屋さんを営業しています。店名のPebblesとは小石の意味ですが、店名に恥じないようなキラリと光る書籍をご紹介できたらいいなと思っています。
よろしくお願いします。

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